Last UpDate (10/10/27)
連日猛暑日と言われていた夏を越えると、ほどよい気温の秋。
水田や畑の作物は刈り取られ、草木は色を変え、すぐにも訪れる冬に備えている。さして意識しない毎年の習慣や風景の移り変わりで、なんとなく季節の変化を感じとる事が出来る。
それでも現金なもので、暖かな日々がすこしいつもよりも長く続いただけで、寒さへの対策を怠ってしまっていた。
「うーん、ここの所急に寒くなっちゃって、外に出るのも勇気がいるわねー」
暖かくした部屋の窓から木枯らしの吹く庭をみて呟くのは、日が昇ってすっかり明るくなった時間だというのに、未だ寝間着姿の麻莉亜。
普段は綺麗にとかし、お気に入りの髪留めでポニーテールにする長い髪も、自由奔放に絡まり合っている。
寒くなってくると布団から出るのが遅くなってしまい、二度寝三度寝……起きるのが遅くなると気分もだらけてしまい、折角の休日もなかなか出かけられないでいた。
「うー、寒い。暖かい紅茶でも淹れようかな……」
空の雲が流れ、日が陰ると家の中にいてもそれなりに寒くなってしまう。
窓越しに空を仰ぎながら、肩を震わせ、自らを抱くように身を固くすると、恨めしそうに流れゆく雲を見た。
「しばらくはお日様はお預けね……ぅぐ」
呟き、庭に視線を落とすと、硝子に自分の姿に絶句する麻莉亜。
日が陰り、光源が部屋の電灯になったため、起きてから未だ何もしていないその姿は、怠惰の象徴としかいえない。
緩みきった顔、しわが入りいくつかボタンが外れた寝間着。そんな姿で窓から外を見ていた自分。
誰かが窓の外から見ていたら……。思い返すだけで顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
「っさ、さすがにコレはまずいわね……」
人間として、何より女の子として、この姿はまずい。今の自分のあられもない姿を目の当たりにして、そう思った麻莉亜は一念発起。
すぐさま洗面所へ向かい、冷たい水で顔を洗う。
お気に入りのブラシと櫛で髪の毛を解かし、これまたお気に入りの髪留めで後頭部上方でポニーテールを結った。
そして洗面台の鏡の前で薄めのお化粧。
普段からあまり化粧をしない彼女はここにあまり時間を割かない。
部屋に戻って冬の衣服を引っ張り出す。
衣替えで出してはいたものの、暖かな陽気の所為で、少し奥の方にしまわれていた。
姿見の鏡の前で小一時間。あの服この服と、とっかえひっかえ見比べる。
デートでもないのに気合いが入るのは、先程見た自分の姿があまりにショックだったからかも知れない。
結局、服が決まったのはお昼前。
折角化粧をし、着替えも当初の予想以上に気合いが入ってしまったので、食事がてら散歩をすることにした。
「よし、準備万端。さぁ、行ってきます」
玄関の前で意を決し、寒空の下へと、最初の一歩を踏み出した。
* * *
少し早めのお昼ご飯も終わり、お腹ごなしに近所の公園へと足を向ける。
休日とはいえ、最近尚更寒くなった所為か公園の中は人もまばらだ。
秋の名残で降り積もった黄色や赤の葉が少しだけふわふわな絨毯となっている。
公園の木々からは葉が殆ど落ち、やがて来る春の到来を今から待ちわびている様だ。
しかし、その姿はまるで子どもが巣立った後の親の様であり、どこか寂しく、もの悲しさを感じさせた。
「ふう、すっかり冬の寂しい公園って感じね」
絨毯の上をある気ながら、そっと独り言。 季節は巡る。いずれは緑が生い茂り、賑やかになるのだが、それ故にこの寂しさが際だってしまうのは仕方のない事だ。
ふっと空を仰ぐ。丁度雲が流れ、陽光が公園に差し込む。
眩しくて視界を落とした麻莉亜は、先程までの考えを否定するその光景に息を呑んだ。
陽光に照らされ、キラキラと、葉っぱに付いていた朝露の雫が光る。 木々が落とす影はまるで踊る相手を待つ紳士。
時折吹く強い風が黄色や赤、茶の葉っぱを巻き散らし、その風にのって木の紳士と楽しそうに踊っている様だ。
この季節、この時に、偶然でもこの光景を見られた麻莉亜は、まるで新しい遊びを見つけた子どものように目を輝かせる。
「勇気を出して外に出てきた甲斐があったかな♪」
色とりどりに踊り舞う木々と葉っぱの賑やかさに見とれながら寒さも忘れ、やがて来る春の、緑のダンスに思いを馳せて。 春の到来が尚更待ち遠しい麻莉亜であった。
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