Last UpDate (09/05/26)
6月10日、時の記念日。
特に休日でもないこの日、博物館へでかけたマリエスタとルミア。
やや日も陰りはじめた昼下がり、館内をゆっくりと歩いて回る二人。
長い黒髪に、日本人離れした整った顔立ち、そしてボリューム感溢れるワガママボディを修道服に包んだマリエスタは、 相変わらず人々の……特に若い男性達の注目を集めていたが、それ以上に、その周囲をちょこまかと動き回る少女に、人々の目は奪われていた。
足下まで届く銀色の髪は、風もないのにフワフワと舞い、少女が走り飛び跳ねる度にキラキラと美しく輝く。その様はまるで妖精を思わせた。
……まあ、それ以上に人々が問題視し注目したのは、裸にYシャツ一枚という少女の妙な服装だったのだが。
少女……ルミアは「ソレ」を見つけると、大きく腕を広げてぱぁっと顔を輝かせた。
「わーい。みずたまりいっぱい〜」
ルミアの前には階段状におかれた水槽と人形。
水気のない博物館の中にあって、珍しい存在に口を大きく開けて喜んでいる。
そんなルミアの様子に頬をゆるませながら、マリエスタはルミアの横にかがんだ。
「そうね。でも、コレはただの水たまりじゃないのよ。水時計って言って時間を計るモノなの」
一言一言丁寧に、ルミアが聞き逃してしまうことの無いように優しい声音で説明する。
すると、ルミアは大きな瞳でマリエスタの顔をのぞき込むようにして、大きな声を上げた。
「おかぁさん。じかん……、ってなぁに〜?」
マリエスタは、微笑んでゆっくりと答えた。
「それはね、ルミアが素敵な人間になるために大切に使う物よ」
ルミアはしばらく不思議そうに首をひねって、そして訪ねた。
「んーじゃあ。じかんって、おかぁさんといっしょにいるのにも、たいせつにする?」
少女の問いに、マリエスタはちょっとだけ驚いて、すぐに頷いて返した。
「ええ。私たちの時間も、大事にしていきましょうね」
うれし涙が溢れてくるのを抑えながら。
自分との時間を大切と言ってくれたことにもそうだが、その気持ちを解るようになった少女の成長に喜び以上の喜びを感じたのだ。
「うん〜!」
ルミアは何かを得たように頷いて、満面の笑みで、もう一度大きく頷いた。
竜の少女が人間になるためには、どれほどの「時」を必要とするのか。
二人はその「時」をどう歩んでいくのか。
絆だけが結ぶ、人ならざる親子。彼女たちには大きな試練が立ちはだかることになるのだが……。
それはまた、別のお話。
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