Last UpDate (09/09/15)
「トリック オア トリート!」
無邪気な笑顔でおきまりの文句。
全身をフード付きマントで覆い、元気に言い放つのは妖精のように可愛らしい少女。
マントで隠しきれない程広がる柔らかく、長い髪。 華奢な身体を際だたすシャツにはリボンの、短いスカートとニーソックスにはフリルのアクセント。
着衣嫌いで普段はTシャツ一枚で過ごしていたルミアが、信じられないほどのおめかしをしている。
最初に母、マリエスタを相手に練習すると、思いっきり抱きしめられた後に沢山のお菓子をくれた。
それで上機嫌になったルミアは、段ボールで出来たお手製の鎌を片手に、ニコニコとご近所回りを始めた。
マリエスタとルミアの母子が来てからと言うもの、小江戸川越市ではそれまで根付いていなかったハロウィンがいつの間にか恒例行事になっている。
「とりっくおあとりーとぉー」
満面の笑顔で歩くルミアの足下、髪の毛に絡まったジャック・オー・ランタンのぬいぐるみから聞こえる、やる気の感じられない声。
30pほどの小さな体に小悪魔の羽。ぬいぐるみに見えるそれ……彼女はこの季節が来る度に現れる異界の住人、閃那。
現れる度に母子に挑戦するのだが、その度に行動が裏目に出てしまい連敗を重ねている。
今回は、手近にあった増えるワカメを水に戻し、デロデロにしたものを頭にかぶり「ワカメお化け」に扮したが、目を輝かせたルミアに(ワカメが大好物)食べられかけ撃沈。 逃げようと暴れている内にルミアの髪に絡まってしまう。
畳の上に転がる鎌を見つけた閃那は、必死に手を伸ばし手に取った。しかし段ボール製……結局脱出できず。
そうこうしている内に丁度マリエスタが用意していたカボチャにすっぽりと頭がおさまり、抜けないまま連れ出されてしまった。
「あらあら、大変。いたずらは困るからこれで許してね」
そう言って、魔女ルミアとジャック閃那にお菓子の缶を渡すご近所さん。
ちょっぴり芝居がかっている所が、ほほえましくもあり、この街の住人の人の良さを現している。
「ありがとー」
満面の笑みでルミア。
最後の家を訪ねた、帰りの道すがらお菓子の缶を開けてクッキーを食べ始めた。
「今のおばさんもだけど、お母さんとってもうれしそうだったねー」
ふと感じた疑問を、髪の毛に絡まってぷらぷらと揺られている閃那に話しかける。
「さっきのおばさんはともかく、あんたのお母さんの方は服着てくれて嬉しいんじゃん?」
「ふふふー」とニコニコと笑うルミア。が、
「まぁ、トリックオアトリートが、「また脱ぐかそれともお菓子か」って聞こえて怖くてお菓子出したのかもしれないけどなー」
お菓子の缶に必死に手を伸ばす閃那から続いて出た言葉に、「うっ」と表情が固まる。
「普段からちゃんと服着てれば、そんなこと無いだろうけどな」
その反応を見た閃那はお菓子をとろうとするのをやめ、ここぞとばかりにたたみかけた。
着衣を嫌うルミアに服を着させるという嫌がらせを考えついたのだ。
カボチャの中でしたり顔で笑う閃那。ポーカーフェイスが苦手な彼女にとってはまさに怪我の巧妙。
「……わかったっ。これからはちゃんと服、着るー!」
缶の中身を一気に口に流し込み、ガッツポーズで宣言するルミア。
「ああああああ……」と、空っぽになった缶に手を伸ばす閃那。
余ったお菓子に希望を託していた閃那だったが、帰り着いた家で用意されていたのはルミアの髪の毛のように大量の乾燥ワカメだけだった。
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