2008年5月
「負けられないんだ、俺たちは!」
次々となぎ払われて行く、魔王の力から生まれた異形の軍勢。
その中心にあるのはたった数名の男女。

伸縮自在の剣を持った青年、日陰蒼牙は叫び、一振りで数十の異形をなぎ払う。
しかし、彼が数千を切り裂き、屍の山を築いてもなお、異形の勢力は一向に衰える気配はない。

「お前達がどんなに攻め入ろうと、俺たちは負けない!」

圧倒的戦力の差を前に、されど折れない心で、彼は叫び、剣を振るう。
しかし、戦いが始まってすでに数刻。
如何に幾千の修羅場をくぐってきた彼であっても、その剣筋に、疲労の色を隠すことはできない。

そして一瞬。
視界を遮る汗を拭う、その意識しない行動が、致命的な隙を作ってしまった。
それを、異形は決して見逃さない。
一斉に全方向から襲いかかる異形達、彼の長大な剣はそれに対応することが出来ない!

……!!

彼がほんの一瞬、諦めてしまった時、彼を紅の花のつぼみが包んだ。
そして、異形をはじき飛ばし、彼を護るように、花が咲く。

花がほころび、ほころびから洩れた陽光より、彼の前に姿を現したのは、力持つ文字が刻まれた、紅い甲冑を全身に纏った長身の女、赤刃。
ほころびた花びらは、彼女の回りに浮遊し、四枚の盾へと姿を変えた。

「もう音を上げたのですか? 日陰蒼牙。
 旋璃亜様の姉姫であらせられる、ヒナ様との約束を違える事は、このわたくしが許しませんよ?」


鋭く正面から見据えた瞳を、

「ああっ解っているさ! 俺たちは絶対に負けない。 ……これ以上あいつに、諦めさせるものか!」

力強く見つめ返し、叫び、答える。

「それでは、これは貸しにしましょう。生き残って、この貸し、返して下さいな」

微笑み、再び集まってきた異形の群れに、槍を構えて突撃する赤刃。

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」

再び、長大な剣を、天をも貫く勢いで振るい始める蒼牙。

普段は意見を違えていても、この時は、この戦いは、彼らの想いは一つとなっていた。

大切な人、物、……約束を守る。その時人は、勇者は、大きな力を得る。
そして、彼らは知っている。
絶対に破れない、絶対に負けられない。強い想いを持つ者にこそ無限の力が宿ると言うことを……!

(勇者屋キャラ辞典:「宿命の勇者」日陰蒼牙
2008/32008/5
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