「みんな! 勇者様がお出でになられたぞ!」

とある地方の街に訪れた、蒼牙と旋璃亜に向けられた第一声は、そんな歓喜の声だった。
街はちょうど、祭りの最中。
ただの祭りならば、一通行人として通過出来たはずだったが、その祭りは違っていた。
子供達の無病息災を願う祭りなのだが、それに加え、祭りの主役となる「雛」と呼ばれる男女がいる。
その「雛」は、「秀でた者がなれば、その恩恵にあずかれる」という言い伝えがあるのだ。加え、好意を持つもの同士であれば、結婚は安泰なものになると。

二人は勇者という、人から別格視される存在であり、共に旅をしているという噂は広く知られており、一部では熱愛説も語られていた。
まさにこの祭りにはうってつけ。


……



「な、なんだそれは! ぜ、絶対にやらないからなっ」

「雛」用の服の前で、祭りの趣旨とその噂を知らされ、噛みついたのは、旋璃亜だった。
彼女にとって、蒼牙は初対面から無礼な奴だったし、彼女にとっていい加減とも取れる態度を取る彼は、「恋愛対象外!」と豪語する程の存在だ。ただ、時々頼りにはなるが……

蒼牙の方を見ると「まぁ、祭りなんだから仕方ないじゃないか」と、すでに着替えまで完了させ、祭りの雰囲気を楽しんでいた。


(これではまるで私が落ち着きのない魔王の姫みたいじゃないか……!!)

彼に対しての、負けん気が発動し、旋璃亜はおとなしく雛の服に袖を通した。

(ぁ、ちょっと綺麗だな……)

久々に着た、見せるための服に表情がほころぶ。
この祭りの間ぐらいは、楽しんでもいいかもな……と、最近張りつめっぱなしだった気をゆるませた。


……


祭りの中心の広場で、すっかり「勇者雛」となった二人は、町の人々に笑顔を向けている。
どうやら、ここでは旋璃亜が「魔王の姫」であることを知る人間はいないようだ。

そのせいなのか、それとも、知っていながらなのか、歓声の中から

「アツアツ勇者様! その熱い愛で魔王を早く倒してくれよ!」

な! あまりの驚きに言い返す事もわすれ、二人は我に帰った。
気が付けば、二人とも隣り合って、笑っている。なんだか気恥ずかしくて、二人はそっぽを向いてしまった。
否定しあっても、お互い信頼しあっていることに気づいてしまったから。
(勇者屋キャラ辞典:旋璃亜日陰蒼牙
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