それは二度とは戻らない。遠い日の記憶。 100年ぶりの魔王の娘、37番目の姫として生を受けた私は、かつて母の祖国のあった地で育てられていた。 そこはのどかで何もなく、幼い頃の私には物足りない場所だった。 日々、私の教育係、サタンによる勉強と修行。 物心着いた時から、繰り返されたそれは、私にとって、決して楽しい日々、とは言い難かった。 それでも、その頃唯一楽しみとしていた時間が在った。 それは上から数えて15番目の私の姉、龍刹姉様が訪れてくれた時。 姉様は昔から明るく、太陽のように私に接してくれた暖かい姉様だった。 旅の合間に、姉様が立ち寄ってくれるたびに、私は姉様のあとを着いて回った。 「旋璃亜、今日は何して遊ぼうかー」 ついて回る私に、旅の疲れも見せず、満面の笑みで答えてくれた姉様は、いつも私と遊んでくれた。 いまでも、その顔は、私の心の中に鮮明に残っている。 その優しさは、その笑みは、永遠だろう。と、私は姉様の温もりに甘えていた。 …… そして、13年ぶりに再開した紫の都でも、姉様は変わらず私を迎えてくれた。 魔王の従騎士、「氷の」カイが、私たちの前に現れるまでは…… 紫の都に現れた、カイのアイスパレス。 紫の都を、王たる姉様を守るために、私と勇者達はアイスパレスに赴き、カイの部下と闘った。 それが陽動だと知った私たちは、カイの部下を撃退し、姉様の待つ紫の都の、王座の間に急ぐ。 強い姉様は無事だと、当然のように向けられる笑顔を期待して…… 扉を開いた私たちを……、私を待っていたのは、「氷の」カイの氷柱の中で、美しくも、その陽光の消えてしまった、冷たい、龍刹姉様……。 …… 大切なものを何度も失った。何度も、私は己の無力さを呪った。 けれど、私は歩みを止めるわけにはいかない。姉様は、心(ここ)にある、心にいる。 私に託してくれた、姉様の思いを、私は姉様と同じように、決して裏切らない。 必ず、成さなければならないのだから……! |
(勇者屋キャラ辞典:龍刹) |
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