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| 見上げた空のさらに向こう。遙か次元を超えた天空にそびえる、西洋の城に似た巨大な建造物。 空は濁り暗雲で覆われ、闇の気配が色濃く、ここに至る者全てが畏れを抱かずにはいられない……そこは魔帝マルスーンの居城。 世界が荒廃した時、世界に終末をもたらすと言い伝えられる最強の「魔王」、「魔帝」マルスーン。 人々にとって恐怖であり、絶望。彼の存在は全ての終末を意味していた。 しかし、そんな畏怖すべき存在であるはずの彼の城もこの日だけはその様相が一変していた。 晴れやかに澄み切った空。どこまでも続く蒼穹に雲一つ無く、この日を祝福している様。 一年の最初の日。呼び名は多々あれど、シンプルに言ってしまえば一月一日。 そこではマルスーン軍にとって年始の恒例行事、干支祭りが開催されていた。 干支祭り……毎年その年の干支にちなんだ出し物をそれぞれの将達が行い、そのトップを争うもの。 優勝した将には参加した各軍団に対する優位性が与えられる。という、出番組合とマルスーンが発案した数少ないイベントの一つ。 マルスーン軍からだけではなく、マルスーン軍と交流のある他の魔王軍からも参加者を募っているため、祭りは盛大なものになる。厳格な将達もこの日ばかりはハメを外し、祭りを楽しむ。 日も傾き始め、祭りも佳境へと向かう中、現在他に差をつけてトップを走るのは二組。 トップバッターとして出たリリンが牛となり、ぐうの音も出ないと高得点をキープ。 昼頃アルファが牛娘のコスプレをし、男性陣から絶大な支持を得てこれも満点に近い高得点。 最終的に点数の近い者達同士が、その出し物にちなんだ戦い方で戦い、勝利を収めた者が優勝者となる。という、めちゃくちゃなシステムのため、優勝は牛娘よりは牛そのものであるリリンで決まりという見方が濃厚だった。 だが最後の出場者として、オメガが現れてからこの空気は一変した。 いつも何かに怖がるようオドオドした彼女の出し物に、会場の誰もが期待していなかった。 しかし―― 「美少女と野獣」……兄であるイプシロンがプロデュースした、幻獣（？）ミノタウロスとオメガのペア。 可愛らしい和服姿のオメガと、力強いミノタウロスの存在感に、会場は満点をたたき出したのだ！ そして、オメガの判定が終わった所で、会場はそのまま今年最強の干支を決める戦いへと移行する。 息を呑む会場。 謀らずして出そろった牛、牛娘、牛男の戦い。鳴り響くゴング。 モォと一鳴きするリリン。 大汗をかくアルファ。 「行っちゃって下さいミノ助さん！」大きな声をかけるオメガ。 この勝負行方を誰も想像する事は出来なかった……！ |
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| （勇者屋キャラ辞典：「幻の」オメガ、「地の」アルファ、リリン） | |
| 文：若菜綺目羅 | |
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