「ベア、民の幸せとはなにかっ!?」

幼女としか言えない身の丈に、似つかわしくない大きさの胸を張り、空を見上げ、声も高らかに力説するティアマット。美しい緑の髪は彼女の力の入った一挙一動に反して柔らかくなびく。
突拍子もない言葉だが、握った拳の強さが彼女の真剣さを現している。

「知らない。そんなことはスネークが自分で考えればいい」

反して冷静にさらりと返す、これまた幼女としか言えない姿の少女、ベア。
愛らしい容姿に、可愛らしいリボンで結んだ、銀の長い縦のロールヘア。こちらは外見通りの胸囲で、しゃべり方同様、ティアマットとは対照的。
「スネーク」とは、ゼミニア中隊でのティアマットのコードネーム。

「それではただの独りよがりになってしまうではないかっ。わらわの幸せは、わらわの創った世界の民が幸せに暮らす事じゃっ。じゃが、人を幸せにする方法がわらわには解らぬ……」

人の幸せ、創った世界……。突拍子もない言動を繰り返すティアマットを、呆れているのか、無関心なのか無表情のまま見るベア。
この自称「邪神」は、自称する癖に人の幸せを求めていたり、お節介を焼く、不思議な存在である。
ただ、その言動には嘘が無く、言っている事も心から願っているということは、何度か任務を共にして理解出来た。同時にとてつもなく常識を知らない事も理解出来たが……。


   * * *


「お主が新たなゼミニア隊入隊希望者か……そうじゃな、ゼミニアからパンツをとって来い!」

地下闘技場から解放され、ゼミニアとドラゴンの説得により、入隊することを決めた当時のベア。
入隊するにあたって「各隊員の認め印を貰ってこい」と言われ、出会った隊員順にだされたテストの様なものを着実にこなしていったベア。
しかし、最後に会った、自分とそう変わらない年の頃の少女から出されたテストは、他の隊員とは,全く違うタイプのものだった。

「……スネーク、私を馬鹿にしているの?」

あまりにふざけた内容に、馬鹿にされた苛つきを隠せない当時のベア。

「いやなに。食堂の娘が、隊舎内をパンツ無しで歩くな、と言いおってな。
じゃがわらわは昔、パンツに苦い思い出があってのぅ……。そこでドラゴンに頼もうとしたら食堂の娘に、男には頼むなと言われてな」

本当に困った顔でいう、スネークことティアマット。
「変なヤツ」と思いつつ、仕方ないのでゼミニアにパンツを貰いに行くベア。
ゼミニアは激しく驚いたが、「スネークが……」と、ベアが無表情に事情を説明すると、渋々とだが差し出してくれた。
すぐに戻り、相変わらずの無表情でティアマットにゼミニアのパンツを渡すベア。

「うむ、礼を言う。ゼミニアには苦い思い出を知られておっての。わらわの方から言うのも気が引けておったのじゃ。ハンコを取ってくるついでに履いてくる。一寸まっておれ」

そう言って自室に戻っていくティアマット。

(スネーク、ゼミニア様のパンツ履く……?)

少しして、ティアマットが戻ってきた。手には横に半分に切られたさつまいもが握られ、太ももには自己主張するようにパンツが見えている。思わずそれを見つめるベア。

「待たせたな。それ、印を押してやろう」

ティアマットのパンツに釘付けのベアの胸ポケットから、「なんじゃ、ぼーっとしおって」と各隊員からのサインが入った紙を取り出し、さつまいもを押しつけるティアマット。
さつまいもを離すと、そこには「すねぇく」と下手な字の印が記されており、ティアマットはそれを「これで良し」と満足そうに見、紙をベアの胸ポケットに返した。

「わらわで最後のようじゃな。ようこそゼミニア隊へ、じゃ。これから宜しく頼むぞ」

満面の笑みで右手をだし、ベアに握手を求める。しかし、その手よりも、やはりパンツが気にな。

「スネーク、それ、ゼミニア様の……」

思わず口に出てしまう。が、

「ん? それがどうした? この世界では上の者から貰うのが常識ではないのか……?」

「……」

この時、ベアはゼミニア隊に一抹の不安を感じずにはいられなかった。


   * * *


「じゃあ、いつもみたいに見て回れば良い」

ティアマットに常識が無い理由がわかったベアは、今ではゼミニア隊内で最も彼女の扱いに慣れた者となった。
遠い遠い異国から来たティアマットには、この地方のルールが全く解っていない。
隊員の多くは一から教えようとして、質問攻めにあい最終的に逃げ出す結果となっていたが、ベアは基本、「見てくればいい」「やってみれば?」と放り投げて彼女自身に答えを探させていた。
無論、意識してではなく、面倒だからとか、自分も知らないからだったが……。

「うむ、そうじゃな。では人々の生活を見るために行ってくる!」

ベアの一言に納得し、旅立ち宣言をするティアマット。

「いってらっしゃい、スネーク」

無論止めないベア。

後にゼミニアの知る所となり、それでは困ると「旅」から「散歩」に格下げとなったが、この日以降、バトルフィールド各地で緑髪の無常識な少女が目撃されるようになり、そこここで奇跡を起こしたという。

(勇者屋キャラ辞典:ティアマットベア
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