紫水晶で作られた、都市が一つ入るほどの巨大な城を中心として広がる国、紫の都。
そこは魔王の姫、龍刹によって統治され、人と魔族が平等に生活する数少ない国の一つである。

その城の上層階の広間の一室で、壁に貼られた一枚の写真の前で苦笑いを浮かべる、美しい紫の髪の美女が一人。
白い道着と深い紫の袴を着た姿からは一見、想像できないが、彼女こそがこの都の王、龍刹その人であった。

「本当に、これで良かったのかしら……はあ」

数刻前から、この写真の前で自問自答を繰り返しては、ため息をついている。
写真に写されているのは、ため息をついている当人。端から見れば、決して写真写りが悪かったり、問題のある構図でも無いのだが……。
今、写真の前に立つ彼女と、決定的に一つだけ違うモノがあった。それは……

「これじゃあ、まるでセネリューアの女学生だわ……」

膝上までざっくりと短くされた袴。その見た目はまさに、短くされたスカートそのもの。
あらわになった素足、勢いで撮影してしまったため、さらしを巻き忘れた胸。彼女にとって恥ずかしいことこの上ない。

因みに、セネリューアとは紫の都から春か東に位置する魔導、科学ともに発展した大国で、「学校」と言う制度があり、その多くで制服が取り入れられている。その制服を自分なりにアレンジし、可愛く着こなすのが学生達のオシャレの一つなのだ。

「気に入って下さいましたかな? 龍刹様」

龍刹が複雑な心境で写真を見ていると、後ろから声がかけられた。この写真の元凶となった大臣である。
ゆっくりと歩いて、龍刹の横に並び、写真を見ると、

「どうです、容易く加工や量産が可能でありながら、絵画よりも鮮明。これに文字をいれ、ポスターとして貼りだすことにより、貴方の言葉がより国民に届きやすくなるのです」

満足げに力説する。そんな彼に対し、

「あ、あのさ、やっぱり袴を長くするわけにはいかなかったわけ……?」

これが国中に貼られるとなると、さすがに恥ずかしいので遠回しに撮り直しを要求する龍刹姫。
しかし、

「龍刹様、何を言っておられるのです! この世はインパクト!! 例え行動が派手でも、地味な格好をした貴方の言葉が、どれほど若者に届きましょうか! 否、届きません!」

更に口調を荒げ、続ける。

「龍刹様が拒否なさるからアイドル計画は断念したというのに……もっとキャッチー精神で挑まずにどうなさるのですか!」

あまりの勢いと、迫力のある言葉に、

「あ、う、うん解った。解ったから落ち着いて、ね?」

思わず許可を出してしまった。


……しかし、彼女はこの後、激しく後悔することになる。
まさか、妹の旋璃亜がやってきて、このポスターを目にすることになるとは、この時、夢にも思わなかった。


(勇者屋キャラ辞典:「陽光の闘姫」龍刹
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