黒い翼を広げ、大空を翔る。任務のない、一寸した平和な時間。
普段はしまって窮屈な思いをしている翼を広げられるのも、任務以外ではこんな時ぐらいだ。
幼少の頃から戦場で育った彼女にとって、こうした時間はゼミニア隊で得られた貴重なモノの一つ。
そして、彼女は目的地にたどり着いた。そこはゼミニア隊宿舎から少し離れた所にある電柱の上。

辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、彼女はゴソゴソと懐からフリフリの服を着たお人形を取り出した。

「ふふ、今日もあなたは可愛いわね♪」

人形に語りかけ、見つめる姿はまさに少女のソレ。
……隊の誰にも見せない、彼女の秘密。
普段の彼女の姿からは想像し難いが、彼女は可愛いものに目が無く、集めるのが趣味だったりする。
他の隊員にばれると恥ずかしいので、こうして空いた時間に密かに愛でるのが彼女の至福の時間だ。

人形に新しいアクセサリーを付け、目を輝かせたまま、にんまりとするグリフォン。
そんな普段の姿から懸け離れた姿の彼女の背後から、

「隊長、こんな所にいるしぃ〜?」

突拍子もなく声がかけられた。

ビクゥッ

一瞬の沈黙。
グリフォンは落ち着いて分析を開始する

(声は真後ろ、主はフォックス。大丈夫、見えてない。平静を装いつつ、死角に隠す……良し!)

この間0.3秒。
頭の中でシュミレートした通りにゆっくりと振り返る。

「どうしたの、フォックス?」

すまし顔で、どう見てもいつもの表情。

(良し、完璧!)

心の中でガッツポーズ!
しかし……!

「ククク、こっちだしぃ?」

今度はグリフォンの前方……人形を隠した方から声が。

サァー

顔から血の気がひいてゆく音がする。

「ボクは知ってるから大丈夫だしぃ? 他の人は見てないから安心だしぃ?」

「あ、ああ、そう、そうだったわね。全く驚かさないでよ、あなたは全く」

「あれ? そうだったかな?」と思いつつ、とりあえず今は都合の良い、言葉にすがることにした。
再び声のする方を見ると、そこには小さなラジコンヘリコプター。
こんなモノの接近を許すほど夢中になっていたとは、そう思うだけで顔が爆発しそうだ。

「一応報告だしぃ? ペガサスがそっちに行ったから気をつけた方が良いしぃ?」

安堵も束の間、グリフォンは急いで懐に人形をしまう。

「隊長ー、どこだー?」

近くの木の下から、ペガサスの声が聞こえた。
まさに間一髪。グリフォンは九死に一生を得た。

ゼミニア隊に入り、多くの仲間が出来たのは良いが、秘密の趣味を持つのも楽じゃない。
(勇者屋キャラ辞典:グリフォン
文:若菜綺目羅
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