「敵はすぐにもこの町に到達する。もしここが戦場になれば、民間人が戦闘に巻き込まれるのは避けられない。到着する前に叩くぞ! 以上、解散! 必ず生きて戻れ!」

魔王軍領内の隅にある、魔族だけの町。長きにわたって平和だったこの町に、遂に隣国の軍が差し向けられようとしていた。
軍事的にも資源的にも戦略的価値の乏しい土地であったため、今まで手出しされなかったが、各地で聞こえる勇者達の活躍に、隣国の軍が己の力を誇示するために進軍してきたのだ。

そして、その迎撃を機甲騎士団、ゼミニア中隊が行うことになった。

町の最も大きな建物を作戦本部とし、ゼミニア隊は駐留する。長くはならないだろうが、激しい戦いから帰った者達に、せめてゆっくり休めるようにと、町の領主が用意したらしい。
先程までゼミニアが指揮を執り、命令を下していた作戦会議室には、ゼミニア隊の面々が出撃の準備を行っていた。

「まったく、自ら争いを好むとは馬鹿な連中だ……」

長銃の手入れをしながら、やせぎすの、鋭い眼光を持った緑の髪のエルフ、マーマンが呟く。

「ま、勇者達は数人で魔王軍を撃退しているのに、魔王軍領と隣り合っている国の軍が何もしていません。じゃぁ、示しが付かないとでも思ったんじゃないか? プライドの高い軍人とか王様がよく考えることさ」

自慢の大剣の他に何故か将棋盤をもった、金髪碧眼の美形、ペガサスがため息混じりに答える。

「そういえば、ベアとドラゴンは?」

虎のマスクを被った筋肉隆々の男、タイガーが、主力の二人が居ないのに気が付いた。



……



「ガハハハ! 皆を待っていたら間に合わんわい。事は一刻を争うのだ、ベア。アレを試すぞ!」

大きな口を開け、高笑いする大男、ドラゴン。

「……おーけい」

無表情に答える銀髪縦ロールの少女、ベア。
二人は、……主にベアが……その外見からは想像出来ないほどの戦闘力を持ち、ゼミニア機甲騎士団の双璧を成している。

「よし! いくぞ!」

そう言うと、ドラゴンはベアの腰を掴み、軽々と持ち上げ、振りかぶった。
表情こそ変えないが、ベアの頬が少しだけ赤く染まる。触られた事への恥ずかしさ? ドラゴンへの想い? どちらも否、それは……、

「いっけぇぇぇええええええ! 一投必着ぅぅぅううう! ドラゴンテレポーーーーーーーーート!」

飛翔への期待と喜び。 ベアは青い大空を、見事投げ放たれた。絶対の信頼が成し得た二人の必殺技である。

かくて、ベアは敵の本陣へと到着。
思わぬ奇襲で敵軍の指揮系統は混乱し、戦いらしい戦いになることもなく、撤退した。


そしてまた一つ、ゼミニア隊の伝説が築かれたのであった。


(勇者屋キャラ辞典:ベア、ドラゴン)
文:若菜綺目羅
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