久々に二人で参加出来たお祭り。 昔は、イプシロンの祭り好きの所為で、祭りとあらば、二人で一緒に参加したものだ。 イプシロンが従騎士になってから来ることが少なくなり、オメガも従騎士に任命されてからは、めっきり来なくなっていた。 今までの分も取り戻すかの様に、はしゃぐ二人。そこには、普段の従騎士としての顔はまったくなかった。 夜店を廻り、花火も見終え、祭りも終盤にさしかかった。 (もっと、一緒に居たかったな。普段言えないこととか一杯お話ししようと思っていたのに……) 祭りの楽しさに負けて、会ったら言いたかったことをすっかり言えなかった。 そんな事を思いながら、少し俯き加減に歩いていると、突然草履の花尾が切れた。 「あっ」小さく上げた声に、イプシロンが振り返る。 草履の花尾が切れていることに気が付いた彼は、半ば無理矢理彼女を背におぶった。 「お兄ちゃん、降ろしてよ。恥ずかしいよぅ」 「そう言うなよティア、普段は任務で兄ちゃんらしいことしてやれないんだから、な?」 久々に本名で妹の名を呼ぶ。 そんな兄妹としては当たり前の会話だが、オメガには溜まらなく大切に、優しく思えた。 このかけがえのない、大切な瞬間を守るために彼女は、彼は戦っているのだ。 |
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(勇者屋キャラ辞典:「炎の」イプシロン、「幻の」オメガ) | |
文:若菜綺目羅 | |
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